RCA Model 28×5 1940
RCAが1935年開発した軍用メタル管(MT管)は、堅牢で真空度が高く、高性能を誇りました。
一方で、高発熱量の真空管では、外被をガラスに置き換えたグラスチューブ(GT管)が使用され、本機ではその両方を
見ることができます。 銅製のシャシーに並ぶその数は8球もあり誠に壮観です。
とりわけ低周波増幅部が贅沢です。4極ビーム管25L6-GTをプッシュプルに、そのドライバーには6SQ7-MTを2本
トランスレスで組むなど、とても面白いです。
戦前の米国ラジオは、スーパーヘテロダインは当然、真空管の小型化と、トランスレス化を達成し、
工業製品としてすでに完成形となっていたようです。
本機の製作時期は、日米開戦以前であり、それは米国にとって比較的佳き時代であったことも重要です。
木工を駆使したラウンドコーナーのボディにオークの突板を纏い、簡素ながらも工芸品としての存在感を有します。
機能面では、プッシュボタンによる5局プリセットの機構が組込まれており、これは大変手の込んだ造りです。
その後の戦時体制下から大戦末期にかけて、一様にベークライトの素っ気ない工業製品と化した米国ラジオと比べて、
遊び心と贅沢さが際立ち、アメリカの古き佳き時代を感じさせてくれる Model 25×8
是非ともご検討ください。
機器概要
・トランスレス8球スーパーヘテロダイン
6SG7MT(RF)、6SA7MT (1stDET. OSC), 6SK7MT (IF), 6SQ7MT×2 (2ndDET. AF), 25L6GT×2( OUTPUT), 25Z6GT ( RECT)
・アース方式: フローティングアース
・キャビネット内蔵ループアンテナ方式
・フィールド型ダイナミックスピーカー
・C同調式中間周波トランス(IF 455kHz)
・5局プリセット機構(プッシュボタン)
整備内容
・不良チュブラーコンデンサ交換
・電源ケミコン交換
・ダイヤルコード貼替え
・キャビネット美装
キャビネット天部、側部 / オイルフィニッシュ
サイドコラム / アクリルペイント 艶消し ブラック75%、二酸化パープル25%
コラムトップ/ 銅色
スピーカーグリル / ブラックブラウン 艶消し
キャビネット内部、底部 /ブラックブラウン艶消し
このラジオのスピーカーには、ファクトリーの赤色が塗られていました。その赤を残しております。
・受信調整
IF調整、ANTトリム調整
プッシュボタン機構は、特定の局をプリセットしていません。
ループアンテナ装備の米国ラジオの多くは、鉄筋コンクリートマンションの居室内でも聴取可能です。
なかでも大型のループアアンテナを装備する本機は抜群の高感度を有しており、戦前の米国GT管トランスレスの実力を
今に知らしめる物となります。 NHK第一がやっとの名古屋のマンションにて、第二、CBCラジオが聴けました。
外部入力では、お好みの音源で25L6GTプッシュプルの豊かなサウンドが楽しめます。
外部機器側、ラジオ側双方のボリュームが効きます。
但し、整備品とはいえ本機の構成部品は85年の経年につき、コンディションの変化もあり得ます。
ご理解の上のご入札をお願い申し上げます。