Yahoo!オークション - 【金字塔】アナログの原器 SME3009 S-1プロトタ...




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  「高品位でスムーズなハーモニーは上質の天鵞絨(ビロード)の如く官能的。心地いい余韻は魔的。豊かなる色彩観は、陰影濃く、芳醇にして軽快、爽やか」

  SME 3009プロトタイプ・アームの音味に就いて

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  出品は、SMEアームの第1号モデルとしてアナログ・ステレオ・オーディオ史に燦然と輝く足跡を残したSME3009 S1(=シリーズ・ワン)通称「プロトタイプ」と呼ばれるもの。1959年から1962年の3年間に製造された個体群の中のひとつ。本品を手にする時、加工仕上げの精緻の妙に触れながら、その尋常でない重さ、質量感に先ず驚かれるだろう。肉厚ステンレス材を過剰に奢った結果である。トーン・アームの概念を超える「狂気の沙汰」である。昨今のハイエンド・アームが謳うマグネシウムとかカーボン云々の対極の発想である。現代アームの軽快志向から見れば、シーラカンスのような位置づけでありながら、SMEプロトタイプのパフォーマンス性能は、今尚圧倒的で、色褪せないどころか益々その意義と価値を高めている。陳腐化とは永遠に無縁の不易流行=孤高の存在である。

  SMEプロトタイプ・アームの出自はSPU-T(G/T)の専用アームと言ってよい。1958年登場のオルトフォンSPU-T(G/T)から最高のパフォーマンスを引き出すために考案発明された、ステレオ登場期に現れた革新的アームである。「革新」たる所以は、Ortofonオルトフォン社製の既存純正オリジナル・アームの優れたパフォーマンス性能を十二分に認識しながら、更にそれを超えるパフォーマンス性能を目論み、純正品とは異なるアプローチで見事にそれを実現出来たからである。

  信頼に足る、オルトフォンSPU-T(G/T)専用アームがこの世には2種類存在する。ひとつは①デンマーク製Ortofonオルトフォン純正アーム( ダイナミック・バランス型RMGシリーズ)。そして、もうひとつが本品=②イギリス製SME プロトタイプアーム(スタティック・バランス型)である。それぞれ、固有の音質傾向、個性=音味が窺える。SPU-T(G/T)装着での聴き比べでは、以下のような明確なる印象を受けるだろう。

  ①オルトフォン純正アームの音質傾向は「太く重厚でソリッドな弾力感、そして生々しい躍動感は肉感的かつ官能的」

  ②SME プロトタイプアームの音質傾向は「深重心で陰影濃く、瑞々しい透明感。色彩感豊かにして鮮やか。精緻で棚引くようなホールトーンはストイックにして官能的」。

  2種の異なる針圧負荷方式(密閉型:ダイナミックバランス、開放型:スタティックバランス)の音質。音味傾向と重なる部分があるが、それよりも大きな要因は「慣性質量の違い」と「パイプ素材の共振から来る素材固有の鳴き」だとわたしは考えている。加えて科学や理屈では説明できない神妙なる趣と響きが加味される。美学・哲学の領域である。道具には造り手の感性が憑依するのである。

  ①と②、どちらにも並外れて優れた資質・個性があり惹かれる。科学の本質とは物事を分類することにある。①と②、ふたつの優劣比較はあまり意味がない。比較すればするほど個性が際立つ。迷い、逡巡するだろう。結局のところ、嗜好や価値観の世界が鍵となるだろう。

  オルトフォンSPU-T(G/T)の楽しみ方が2倍になる。それこそが嬉しいとわたしは感じている。慧眼らのオーディオ環境に沿う嗜好を選択すれば良い。米国ウエスタン系のシステムを構築するマニアなら①。英国タンノイ系のシステムを構築するマニアなら②に収斂するだろう。

   SMEプロトタイプは、Ortofonオルトフォン SPU- T(G/T)専用アームの「金字塔(ピラミッド)」と称される。わたしもそう思う。しかしながら、SMEプロトタイプ評価には毀誉褒貶がある。「否」を唱える者等は、SMEプロトタイプの出自を知らず、間違った認識でそれを使った者達である。 SHUER V15などの軽量・軽針圧 MMカートリッジ群をSMEプロトタイプで鳴らそうと試みる事は、無知の成せる技である。当時ならいざ知らず、アナログ史を総括出来る半世紀後の現代ではそう言える。知は力なり。

  同時出品の Ortofonオルトフォン古代①SPU-Tと②SPU-G/T(E)で真実を体験して頂きたい。これほどの名器が一堂に会する事など滅多にあるものではない。この機会をお見逃しなく。

  (下記色文字をクリックするとリンクする。)

  ①【金字塔】アナログの原器 ORTOFONオルトフォン 最初期 SPU-T ”オリジナル=スタイラス&ダンパー” ☆元箱付

  ②【金字塔】アナログの原風景 ORTOFONオルトフォン 古生代(=初期~中期) SPU-GTE ”オリジナル:スタイラス&ダンパー” ☆元箱付

  この個体はその昔、米国から個人輸入したもの。エンド錘が穴あき貫通型。米国市場向けの仕様である。 SHURE-V15などMM型カートリッジで軽針圧・軽量モデル群が使用出来るようにとの配慮である。ビジネスでは「自家撞着」と「ミスリード」が当たり前である。 SMEは米国で商売するためにSHURE社と販売代理店契約を結んでいた。 SMEが後に軽針圧アーム路線にビジネスの軸足をおいたのはビジネス論理でそのほうが儲かったからだ。一部のファンからはSMEの堕落とみる向きもあるようだが、これは世の常である。 SMEプロトタイプの復刻版として企画された SME3009R/3010R/3012 R (R=リバイバル)モデルは肉厚の薄いステンレス材でお茶を濁し、慧眼マニアの顰蹙を買った。 SMEプロトタイプはだからこそ偉大で価値があるとも言える。気がつけばピラミッド(金字塔)の頂点に立っていたわけだから。 SMEプロトタイプは歴史的快挙である。わたしは「奇跡」と言いたい。その圧倒的パフォーマンスを聴けば分かる。時折鋭利な刃先が光るがごとく「狂気」が顔をのぞかせる表現。陰影濃く色彩感鮮やかな英国的田園風景が脳裏に浮かぶ。溌剌として瑞々しく、そして美しく品格がある。もはや芸術の域にある。

  本個体 SME3009プロトタイプは、入手後の2011年に分解整備し、組立の際に改造を施した。数回の使用後、すぐに保管状態に置かれた。理由は、SME3012プロトタイプを別途入手出来たので、そちらを専ら使用したからだ。整備から長い年月が経過しているが、出品に先立ち入念な検査を実施。整備直後の状態をいまだ維持していることを確認している。安心してご使用頂きたい。

  本品についての特記事項がある。アーム・リフトのレバーが昇降時に通念とは異なる所作が認められる。リフトを上まで上げると普通は上限で止まるものだが、指を離すと、この個体は止まる事なく自然にレバーが降下する。ダンピングオイルの粘度や充填量を変えても同じ結果となる。これは瑕疵と考える。しかしながら、使わないと考えるよりも、工夫して使えば便利に転ずるだろう。発想を柔軟に。

  本品に就て、その他の写真や付加情報が下記サイトで確認できる。(色文字をクリックするとリンクする。)

  狂気と息を呑むほどの美しさ…SME3009-S1 プロトタイプ 私家版。(2011年8月整備改造、2023年12月オークション出品)LEMO-5極 搭載。平衡伝送(フルバランス)仕様。

  下記のサイトも参考になるだろう。

  レコード再生の要はトーンアーム。新生SMEに受け継がれたクラフトマンシップとは?

  バランス伝送の PHONOイコライザーやプリアンプ等の機器導入時には同時出品のハイエンド・アッテネーターが役に立つだろう。

  【金字塔】”Less is more” フルバランス(完全平衡伝送)XLR ステレオ・パッシブ・プリ・アンプ QUATRO- 2 ☆ DAVEN2連アッテネータ H型 600/600 Ω 減衰(20+20)DB

  夢を実現させる道具には使い手を楽しくさせる魅力すなわち資質がある。いい道具との出会いが人生の明暗を分ける。本物と出逢うことで人は飛躍でき成長する。名器とは人をワクワクさせる道具のことである。

  SMEアームの生みの親であるエイクマン氏とSPU-G/Tとの出逢いがなければ SMEプロトタイプはこの世に生まれなかっただろう。 SMEプロトタイプとの出逢いがなければ、わたしは SPU/GTの最初期型である SPU-Tを世界中探し求めなかっただろう。 SPU-Tとわたしが出逢わなければ、トランスの遍歴などしなかった筈である。Western Electricトランスとの出逢いがなければ、音楽の本質にせまることもなかったであろう。美しい音楽との出逢いがなければ人生がこれほど輝いて見える事は無かったであろう。